今日は人生の「ポートフォリオ経営」について書いてみたいと思います。
私がファンドマネージャー/アナリストとして働いていた時に感じた分散投資の重要性を、個人の人生にも生かせるはずだと考え実行してきたお話です。
ポートフォリオとは
「ポートフォリオ」はもともと、書類を運ぶための平たいケースを意味する言葉です。
金融分野では、資産構成を意味します。
どの資産にどれだけ投資しているか、資産全体の内訳を表す言葉です。
資産運用会社は自社の運用哲学や運用方針を予め開示しています。
私たちが自身の資産をプロに預けて運用してもらう場合、預け先や個別ファンドの運用方針などを確認したうえで申し込む形になります。
具体的にどの銘柄をどのタイミングでどれだけポートフォリオに組み入れるかは、担当ファンドマネージャーの好みや手腕によるところが大きいです。定期的に開示される運用報告書でポートフォリオの状況をしっかり確認していきたいところです。
ご自身で直接投資をする場合にも、ポートフォリオを管理するための仕組みを整えておくことが大切です。
有事に備えたり、次への戦略を立てるためには、ポートフォリオを瞬時に一覧できる状況にしておくことが欠かせません。
分散の効いたポートフォリオとは
私はもともと、ファンドマネージャー/アナリストとして働いていました。
お客様からお預かりした資産をこれと思う企業等に投資する仕事です。
当時のお客様は安定運用を求められる方が多かったため、一定以上の信用力を備えた企業にできるだけ分散して投資することを心掛けていました。
いわゆる「すべての卵をひとつの籠に入れるな」というお話です。
仮に、4社に25%ずつ投資した場合を考えてみましょう。
調査する企業は4社のみ、同業他社や業界の分析を含めてもそこまでの負担にはなりません。
しかし、もし1社が破綻すれば全体の25%を毀損する可能性があります。
株式投資では将来取り戻せる可能性がありますが、社債投資では25%の損失を埋め合わせることは容易ではありません。
一方、もし25社に4%ずつ投資していたら、どうでしょうか。
調査する企業は25社となり、分析や売買に関する手間が増えます。
しかし、もし1社が破綻しても毀損する可能性は全体の4%です。
ポートフォリオ全体への影響を限定することが可能となるのです。
もう少し具体的な例についても考えてみましょう。
2011年3月に東北大震災が発生、東京電力の原子力発電所で爆発事故が起きました。
投資家の多くは当時、電力会社の株式や社債は安全性の高い資産として認識していました。
安定運用を目指してまとまった金額を東京電力に投資していた投資家の中には、保有金額が大きいためにファンドの時価を低下したり、売却するのに苦労するケースも見受けられました。
ポートフォリオの価値を毀損した投資家も存在した訳です。
投資先となる企業についてどれだけ分析したとしても、天災や事故など予期せぬ事態がいつどのような規模で生じるかを予想することはできません。
原発事故について事前に予測できた人はおそらくいなかったことでしょう。
やはり、分散することは大切だと実感した事例です。
人生の「ポートフォリオ経営」とは
私はエグゼクティブコーチのほかにも、色々な仕事をしています。
コンサルタント、ワークショップデザイナー、お金と投資の講座の主催、ジェンダー総合研究所の共同代表、料理教室mayumi's kitchen主宰、NPO法人ライトハウス理事、などです。
企業や非営利団体から個人の方まで、幅広い分野の皆さまとお仕事をさせていただいています。
こうした働き方を人生の「ポートフォリオ経営」と名付け、特に脱サラしたいと考えている方におすすめしています。
日本では戦後に確立された終身雇用制度のもと、同じ職場で定年まで勤めあげたり、同じ仕事を続けて極めていくことが良しとされてきました。
しかし、時代は変わっています。
海外に出れば、転職により色々な職場を経験したり、一人でいくつもの仕事を展開している例も散見されます。
日本社会で良きものとして捉えられてきた働き方は、時代や場所が変われば「普通」でも「当たり前」でもなくなる可能性があるのです。
こうした概念がいわゆるアンコンシャス・バイアスとして私達を縛ってきたかもしれません。
新しい視点をもって一度立ち止まり、自分らしく納得感のある生き方について考えてみてもいいのではないかと考えます。
個人事業主として脱サラを目指す方へ
脱サラを考える方にとって、大きなハードルとなりやすいのは、経済面での不安なのではないかと考えます。
私自身もそうでした。
コーチングセッションでお話しするクライアントさんからも、経済面に関する不安を伺うことがあります。
今の職場なら何をすればよいか大体わかっています。
収入もある程度見えているけれど、脱サラしたらその辺りが全然見えなくなりそうで不安です。
やりたいことは決まっているけれど、今より収入が減りそうでなかなか踏み出せません。
でも、仕事にもなかなか身が入らなくて・・・。
仮にAさんという方が脱サラを考えている状況を考えてみましょう。
Aさんの年収は1,000万円。
同じ企業に20年近く勤務し、会社のことも仲間のことも良く知っています。このままなら定年まで安定した収入が得られる可能性が高そうです。
しかし、子供の頃からの夢があり、そろそろ脱サラしたいと考えています。
個人事業主となっても、同じ売上高をあげたいと考えています。
Aさんが個人事業主として一つの仕事を始めた場合、すぐに1,000万円稼げそうでしょうか。
おそらく、そんなに簡単な話ではないですよね。
では、二つの仕事で500万円ずつ稼ぐとしたら、いかがでしょうか。
あるいは、四つの仕事で250万円ずつであれば、いかがでしょう。
1,000万円ではなく、250万円ならいけそうな感じがしませんか?
複数の仕事を兼務することのメリットは他にもあります。
分散投資の考え方で記した通り、一つの仕事が低調の時に他の仕事に助けられることがあるのです。
私自身、もし料理家として料理教室だけを主催していたら、コロナ禍で対面レッスンが出来なくて厳しいことになったかもしれません。
コーチングやコンサルティング、各種講座やワークショップはオンライン化を進めていたため、コロナ禍の影響を抑えることが出来ました。
自身の人生におけるパーパスを意識しながら、やりたいことや得意なことから手掛けてみるといいかなと考えています。
そして、人生の「ポートフォリオ経営」ができていたら素敵だと思います。
仕事における分散効果とは
ここまで読んでみて、「そんなこと言われても、複数の仕事なんて出来ない/やりたくない」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
大丈夫です。
必ずしも違う職業や職種でなくても大丈夫です。
例えば、IT関連のエンジニアであれば、企業向けのコンサルティングやプロジェクトマネージャーなどをする一方で、個人向けにIT関連のセミナー講師をしたりプライベートレッスンを請け負うこともできるかもしれません。
ここでいう仕事における分散効果とは、職業や職種としての分散ではありません。
収入源の分散をはかるということです。
これまで取り組んできた仕事では、知識や経験が蓄積されています。
視点を少し変えて、すでにお持ちの智慧やリソース、ネットワークなどを共有可能な対象や分野が他にもあるか探ってみましょう。
ご自身の知識やスキルを提供する相手や提供の仕方を少し変えるだけでも、分散効果は得られるのです。
需要面での相関性が低い事業に複数取り組み、収入源の分散をはかれれば、有事への対応としても万全になります。
ご自身の働きかたをもっと柔軟に色々な角度から見直してみませんか。
私達はみな、様々な可能性に溢れています。
一つに決めつける必要はないのです。
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