今日はよくご質問をいただく「コーチングとティーチングの違い」について書いてみたいと思います。
山本五十六の名言
みなさんは、山本五十六氏をご存知でしょうか。
1884年に生まれ、最終的には元帥海軍大将までつとめ、名言「やってみせ」を世に残された方です。
やってみせ、言って聞かせて、
させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、
任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、
信頼せねば、人は実らず。
<引用元 地球の名言 Words of the Earth>
ティーチングとコーチングとの関係性
冒頭の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という一文がとても有名ですよね。
この一文からは、上司である自分がまず実践し、部下を教え導いていく様子が分かります。
自身の智慧や経験を伝えていく「ティーチング」の説明といえましょう。
一方、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」という一文はまさにコーチングそのものと考えられます。コーチングでは、質問力(=話し合い)、傾聴力(=耳を傾け)、承認力(承認し)という3つの力をとても大切にしているからです。
さらに、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」という最後の一文にある通り、コーチはクライアントの中にある様々な煌めきや可能性に注目します。
私がコーチングを学んだCTIジャパンでは、コーアクティブ・コーチング®の礎のひとつとしてNCRW (”People are naturally creative, resourceful, and whole.”)を大切にします。
「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」と考えるのです。
コーチとしての在り方
私はいつも、クライアントの中に答えがあると信じてセッションに取り組んでいます。
コーチである私の価値観に基づいてベストと考える方法を伝えるのではなく、クライアントの中にもともとある願いや可能性を信じ、クライアント自らがそれに気づけるよう心掛けています。
様々な角度から質問を投げかけたり、異なる視点や場面を体験していただくために尽力します。
理論ではなく感情や身体感覚を味わうために、身体を動かしながらセッションを進めることもあります。レゴ®シリアスプレイ®という手法を用いてブロックを組み立てながら、忘れていた記憶や心に閉じ込めていた無意識の感情にアクセスしていくこともあります。
クライアントの皆さまの性格や状況などを勘案しながら、さまざまなアプローチを組み合わせてセッションを進めていく形です。
ティーチングとコーチングの違いに気づいた時
大分前の話になりますが、私がCTIジャパンで学んでいた頃、クライアントのために出来ることなら何でもしたい!という思いに囚われてしまったことがありました。自分に分かることであれば何でも伝え、出来ることなら何でもしてあげたいと。
でも、頑張ってもなかなか思うような結果につながりませんでした。
当時のスーパーバイザー(コーチの卵たちに教える先生のことです)に相談したところ、「まゆみさんのやっていることはティーチングじゃないですか?コーチングはクライアントを信じてクライアントの中にある願いや答えを見つけ出し、行動に移すためのお手伝いをすることですよ」と言われたのです。
がーーーーーん!!
当時、ものすごい衝撃を受けたことを覚えています。
そうか、私はNCRWが出来てなかったし、自分の考えを押しつけているだけだったのか!!と。
確かに、私にとってのベストな選択は、必ずしも誰かのベストにはなりえないのです。
自分が大切にしている価値感や想いはそれぞれ違っているのですから。例え何らかの機会や選択肢を提示することが出来たとしても、最終的な選択をするのはクライアント自身でなくてはならなかったのです。
ようやく「コーチングとティーチングの違い」が分かった瞬間でした。
違いを理解してからセッションをスタートする意味とは
実はこの部分は、クライアントの皆さまも混同されている場合があります。そのため、初めてセッションをお受けいただく際にも「コーチングとティーチングの違い」についてお話しさせていただいています。
「何か教えてもらえるのではないか?」
「安藤さんがどうにかしてくれるのではないか?」
「とりあえずセッションに行けば変えてもらえるはず!」
上記のような期待をしてしまうと、ご自身の能力や可能性を十分に出しきれなくなってしまうためです。
コーチングでは、コーチは100%クライアントの皆さまのために尽力します。
クライアントの皆さまにもご自身と向き合い、ご自身のことをしっかり内観していただきたいと考えています。
ご自身の大切にしている価値観や譲れない想いを確認し、ご自身で選択し進んでいただきたいのです。
クライアントの皆さまが望む方向へと進まれることをいつも願っています。
そのために必要な、本質的な変化を遂げていく 瞬間ーーー その瞬間に立ち会えることが、コーチとしての至上の喜びであると感じています。
(注)ティーチングとコーチングはアプローチが異なるため、クライアントの皆さまの目的や状況に応じてより効果的と思われるほうを選択していただけたらと思っています。
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